リーバイス社がゲイリー・グリムショウのデザインによるMC5のロゴとアートを使用して「ソニック・レボルーション」という限定生産のヴィンテージ・アイテムを上市したのに伴い、3月13日ロンドンの100クラブでギグが行われた。オリジナル・メンバー3人が参加し、再結成というよりMC5トリビュート・ショウのような形で開催されたのである。「革命を標榜したバンドがコマーシャリズムに身売りした」と、ウェイン・クレイマーのメッセージボードでは壮絶な論戦が繰り広げられ、これを受けてウェインもついにクレイマー・レポートをアップ、今回のライブを行なうに至った顛末とバンド・メンバーの立場を表明している。
このリーバイス・ソニック・レボルーションだが、少なくともアメリカではしばらく前からリーバイスのヴィンテージモノを扱っている小売店で販売されているらしく、今年2月号の VIBE 誌にジャスティン・ティンバーブレイクがこのTシャツを着て表紙を飾った。自分は全く知識がないのだが、このジャスティン君というのは、ボーイズ・ボーカル・グループ、*NSYNCのメンバーでもあり、ティーン・ポップ系のスーパースターらしく、いわばアタマがカラッポなアイドル歌手(失礼)の代表格になっていて、ウェインのメッセージボードでも「ティンバーブレイクに『あのバンドが好き』って言われたら、そいつらは直ちに破滅する」と書かれるほどの人。MC5のシャツを着ていたのがよりにもよってティンバーブレイクだったというのが、ダイ・ハードなMC5ファンのゲキリンに触れ、"Kick Out The Jeans!" と、反リーバイス論争の引き金になったのだった。

一方私はギグ前日の水曜日にロンドンに到着。チェックインしてしばらくするとクレアという女性から電話がある。実は日本を発つ前からインタビューの申し込みを受けていたのだ。どうやら今回のイベントの一部始終がDVDになるらしく、わざわざ海外からこのライブのためだけにやって来る(酔狂な)ファンの代表として私が選ばれたらしい。このライブのためにヨーロッパ各地からファンが集結することはフランソワ(今回私をゲスト・リストに載せてくれた、MC5ファンサイト最高峰 MC5 Gateway のフランス人管理人)から聞いてはいたが、片道12時間を費やしてまで飛んで来るほどの道楽者は私だけらしい。あまり気がすすまなかったけれど、ちょっと話をするくらいならいいかと引き受けたのである。
で、翌日私のホテルの部屋にやって来た3人組の撮影クルーを見てショックを受ける。よく考えてみれば、DVDに使用するなら映像が入るのは当然だが、他人に写真やビデオで撮影されるのが極端に嫌いな自分は逃げ出したくなった。
しかし今更断れるはずもなく、いざインタビューが始まってみれば日本語でも自分の考えを表現するのに苦労しているのに、ましてや「私の質問部分は流れませんから、質問を取り込んだ形で答えて下さい。」なんて要求に応じつつ英語で答えるのは至難の業で、四苦八苦しながら軽率な発言を繰り返し、ようやく解放してもらった。
今朝偶然見つけたと言って、クレアがこの日の「ガーディアン」紙に掲載された今回のイベントの記事をくれた。リベラルで知られる高級紙だが、「パンクはカネになる」と題されたこの記事に関してウェイン・クレイマーは上に挙げた最新クレイマー・レポートの中で「この3人が揃う数十年ぶりのインタビューを一番最初に行なえるという利点があったにも関わらず、相変わらずの『カネのために身売り』式論調の退屈な記事にしてしまった」と斬っている。
これで撮影終了かと思いきや「ギグに出かけるシーンを撮りたいから、着ていく服に着替えて欲しい」という。その後は身支度シーン、ホテルから出てくるシーン、道を歩いてるシーンなど、もうどうにでもなれと言う感じで演じ切り、「ギグ終了後にまた感想を撮るから」という言葉を残して彼等が引き上げた後はもの凄い虚無感を味わう。監督のドン・フィリップスとかいう人が「これ、マズいよ、ボツ!」と編集で全面的にカットしてくれる事を心の底から願うだけである。合掌。

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