メイン・ストリームのロック・シーンとは完全に隔絶しているショウだ。行なわれている場所が音楽ビジネスの中心地、ロサンジェルスだってことを考えるとすごく不思議なことだと思う。敵陣の背後で活動するゲリラってところだ。

(「ベイクド・ポテト」での毎週水曜日のギグについて)
クレイマー・レポート 2003年8月26日

2004年4月17日、ロサンジェルスのベイクド・ポテトで行なわれた、ジョン・シンクレアのライブに行ってきた。彼は現在オランダのロッテルダムに住んでいるが、時々こうしてアメリカに帰ってきては、ウェインをバックにスポークン・ワードのショウを行っている。

UCLAにほど近いホテルに到着したのは前日の午後1時頃。3時近くまでチェック・インができずホテル内のバーで一人時間をつぶす。この晩は、マイケル・デイビスの自宅に夕食に招待されていた。MC5関係の活動が活発になってきたこともあり、マイケルと夫人アンジェラは昨年、ウェイン・クレイマーが住む L.A. にアリゾナ州から移って来たのである。

タクシーを飛ばしてデイビス宅前に着くと、暗闇の中、1階のダイニングにこうこうと明りが灯っているのが見えた。入って行くと一同が温かく迎えてくれた。集まっていたのはマイケル・アンジェラ夫妻、ウェインとマーガレット夫妻、ジョン・シンクレア、そして翌日のギグで前座を務めたマイケル・シモンズだった。アンジェラの手料理とビールでリラックスした一時を過ごす。彼女の末息子、幼いガブリエルや、人なつこい飼い猫スプーキーも登場し、とても楽しかった。日本を発つ前にヒステリック・グラマーの北村氏から頂いた同社発行のパティ・スミス写真集を見せたら、全員とても興味深そうに見ていた。シンクレア先生は、MC5へのリスペクトからメンバー全員が「シンクレア」という名字を名乗るスペインのバンド、「トウキョウ・セックス・ディストラクション」のCDを手にしてご満悦であった。帰りはウェインとマーガレットにホテルまで送ってもらう。疲れてはいたけれど、すばらしい夜だった。

翌日は遅く起き、昼間はガイドブックで適当に選んだ「グローヴ/ファーマーズ・マーケット」という場所に行ってみた。ここが意外にもアタリで、噴水のある小さな公園の芝生では仮設ステージにバンドが出てなかなかよい音楽をやっていたり、ダダっぴろいだけでたいして面白いとも思わないL.A. だが、ここは私好みの「お寺の境内」的雰囲気、老若男女が集まる Plaza の感じがあって楽しかった。ホテルのコンシェルジェのおばさんはロデオ・ドライブ等の買物エリアをしきりと教えてくれたけれど、ブランド商品に全く関心のない自分にはこういう場所の方がずっと居心地がいい。

夜はアンジェラとマイクがホテルに迎えに来てくれて、3人でシンクレア・ライブが行なわれる「ベイクド・ポテト」に向かう。ここはウェインが以前、毎週水曜にギグを行なっていた場所でもある。アンジェラが駐車場に車を入れている間にマイクと2人で入り口に向かう。この日ゲストとしてプレイすることになっているので、ベースを肩にひっ掛けて歩くマイケル・デイビスのカッコ良さにホレボレする。アメリカ人としては(ロッカーとしてさえ)奇跡的、若い頃と比しても全然太っていない「MC5ベーシスト」のたたずまいである。

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