(左・立っている男性から)デロン・グレイムス(サウンド・アシスタント)/ロン・アイヤーズ(サウンド・レコーディング/デヴィッド・C・トーマス(監督)/ローレル・レグラー(プロデューサー)/マイク・デイビス(ex-MC5ベーシスト)/アンソニー・アレン(撮影)Photo by Jim Roehm (c)Future/Now Films 1999
aaaaa偉い奴らがシカゴにいる。

インデペンデント映画製作プロダクション「フューチャー・ナウ・フィルムズ」のことを知ったのは、友人が発刊するカナダのロック・ウェブジン「モヘア・スウィーツ」のインタビューを読んだからだ。

彼らは、MC5のドキュメンタリー映画を製作したのである。しかも、MC5の物語は大画面、大音響で鑑賞されなければならないという正しい信念に基づき、ビデオではなく劇場公開を目指した。

完成までの7年間これといったスポンサーもなく、乏しい製作資金で悪戦苦闘しながら丹念に取材を重ね少しずつ撮影を行った。パンクのプロト・タイプとしてロック史に名を残しながら、全く報われることのなかったこの不運なバンドの歴史を何とか残したいという誠意だけで、彼等はこの映画を完成したのである。

映画のタイトルは「MC5*トルゥー・テスティモニアル (「実証」)

キック・アウト・ザ・ジャムスのイントロで、J.C.クロフォードが叫ぶアジテーション。

最後の一言が "I'll give you a testimonial, the MC5!"

この testimonial その動詞 testifiy という言葉が今ではMC5のシンボルになっているのである。フューチャー・ナウが製作したMC5Tシャツはゲイリー・グリムショウのデザインだが、その背に Are You Ready To Testify? と印字されていたのはこのためだ。MC5というバンドが実証した60年代の理念と思想を見せてくれる映画である。

MC5のシンボルの話ついでに言うと、「星条旗」も彼らのトレードマークである。ギグを行う時MC5は常に、高く積み上げたマーシャル・アンプを星条旗で包んでいた。アメリカという国家を改革しようという、それは彼等の意思表示だった。CDのパッケージ・デザインその他、スターズ・エンド・ストライプスをあしらったデザインが多用されているのはそのためである。

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映画は完成し、各地のフィルム・フェスティバルで上映されたが、フューチャー・ナウが究極の目標とする一般劇場での配給実現を前にウェイン・クレイマーへの報酬をめぐるトラブルが発生、これがこじれてライセンス問題に発展して泥沼化し、2004年9月現在映画上映のメドは全く立っていない。公開を待ち望んでいたファンのためにも1日も早く和解が実現することを切望する。