DKT/MC5 : 蘇るモーター・シティ・パンク魂
ブレット・ミラノ
ボストン・ヘラルド 6月19日

死んじまったフロントマンを代用品で充当し、ツアーを行った60年代後期の伝説的ロックバンドと言えば、ザ・ドアーズが記憶に新しい。惨憺たる結果に終わったのは周知の事実だが。

しかし先週木曜日、アメリカ中東部を訪れたデトロイトのプロト・パンク・バンド、MC5(メンバーの姓のイニシャルを取って今はDKT/MC5と名乗っている)の残党は、かなりイイ線いっていた。

客の入りは3分の2、悲惨なコケ方で終わった曲もあったし、マーク・アーム(元マッドハニー)とエヴァン・ダンド(元レモンヘッズ)がロブ・タイナーの代理として果たしてふさわしかったのか、ファンの評価は永久に分かれるところだろう。だが、3枚の公式アルバム収録曲で構成された2時間のライブは、かつてのMC5の激烈なパワーを一度ならず彷彿とさせた。

まず驚いたのが、今は亡きもう一名のメンバーであるフレッド・ソニック・スミスの代わりにリズム・ギターを弾いた、ポップ系シンガー・ソング・ライター、マーシャル・クレンショウだ。メガネにボウリング・キャップといういささか場違いのいでたちではあったが、野性的で荒削りなクレンショウのギター・サウンドは違和感なく溶け込み、彼が1曲だけリードで歌ったオープニングの "Tonight"はあの夜のハイライトの一つだった。

ほとんどの歌でリード・ボーカルを務めたのがマーク・アームだったが、大ファンであるMC5の音楽を知り尽くしている事は明らかで、タイナーの壮絶なボーカルをほぼ再現していた。しかも "I Want You right Now"ではタイナーがかつてやっていたように、ステージ上で男女一組を絡ませるということまでやってのけた。

で、ダンドだ。今回のツアーでは壊滅的にヒドイと聞いていた。歌詞は忘れるわ、ライブ中にぶっ倒れるわ、ニューヨークのギグではヤジった客と取っ組み合いのケンカまでしでかしたらしい。が、奴もここボストンでは行儀良く振る舞い、ポップな曲を歌った時も、そのヘタさ加減は予想の半分くらいで納まっていた。ステージ上では多少ボーっとしていたが、どっちにしろダンドは普段からそうだ。そしてソウルなバラード、"Let Me Try"では、奴を入れた甲斐があったと誰もが思ったことだろう。

"Kick Out The Jams"の全員大合唱にはピーター・ウルフも加わった。もっとも歌詞はよく知らないみたいだったが。しかし、本物の興奮は、オリジナル・メンバーであるドラマーのデニス・トンプソン、ベーシスト、マイク・デイビス、そしてギター・ヒーロー、ウェイン・クレイマーによってもたらされた。往年のメタルとパンクとフリー・ジャズのミックスを、このコア3人組は楽々と再現していた。締めくくりの1曲、サン・ラとの共作である "Starship" は2004年の今聴いてもラディカルだった。